上に乗らないでください
所用があってホークアイ中尉を探していたら資料室にいるということだったので、オレはそこに向かった。中尉は確かにその部屋で、脚立に上って資料を探していた。入室するときにノックをしたはずだが、集中しているのか、こちらには気づいていない。 「あのー、ホークアイ中尉?」 何の気もなく声をかけた。作業に集中していた中尉はびっくりした様子でこちらを振り向き―――そしてバランスを崩して脚立ごと倒れたのだ。 「危ないっ!」 気づくと体が勝手に反応していて、脚立をよけながら、中尉の下敷きになっていた。 彼女が軽かったせいか、痛みとか重みとかそういったものはほとんど感じなかった。・・・しかし困ったことに、体が密着しているせいで中尉が女性であるということを、必要以上に感じ取ってしまったのだ。 もちろん彼女は美人だしスタイルもいいし、どんなに銃の腕前がよかろうが軍の男性陣よりも軍人らしかろうが女性であることは間違えようがなかったが、職務中はそのことに関しては極力気にかけないようにしていた。だけど、こういう状況で、軍服の一枚隔てた向こうにあるその体つき――なんというか、もちろん軍人だから筋肉はかなりついているんだろうけれど、男とは違ってやわらかくてもちっとした感触があって、ついでにちょっと甘くていい匂いなんかもしちゃって――を感じてしまったオレは、思わず動けなくなってしまった。 中尉は何が起こったのかわかっていない様子でしばらく呆然としていたが、やがて我に返ると、 「ハボック少尉、大丈夫?」 と声をかけてきた。しかし、一向に退く様子はない。 ・・・カンベンしてください。アンタが上に乗っていると、いろんな意味でオレ動けないんッスよ。 「中尉、オレは大丈夫ですから、とりあえず降りてください」 彼女が離れていくのをちょっともったいないとも思いながら、いつもの「上司部下」に早く戻らなければと大きく深呼吸をした。 (2007.07.19) -- 「上に乗らないでください」というより、「下に降りてください」って感じになっちゃいました(汗) |