遠い日の青い空

「はぁ…。」
晴れた空を眩しそうに見上げ、漆黒の髪と瞳をもつ青年、ロイ・マスタングは溜め息をついた。
彼は士官学校生で、まだ18歳になったばかりだ。
そしてまた、彼は若いながらも錬金術師で、最近弟子入りを果たしたばかりだった。
そんな彼は今、非常に悩んでいた。
…そう。国家錬金術師になるかどうか。
国家錬金術師になれば様々なサービスや研究費を得ることができ、しかも人々を助けることが出来る。
しかし何故か自分の師匠は国家錬金術師を…いや軍を毛嫌いしている。
そんな師匠にこの悩みを持ち込めば、必ず反対されてしまうのは目に見えていた。
だから迷っていた。
自分の思うままに進むか、素直に忠告を聞いて後戻りするか…。


ロイはいつも、この窓から見える青い空を見つめながら考えるのだった。




「また考え事ですか?」
師匠の娘、リザが言った。
彼女はロイよりも若く、金髪の髪と琥珀色の瞳をもつ美しい少女であった。
そんな彼女は容姿に不釣り合いなほど落ち着いていて、ロイも最初は驚かされた。
しかし彼女と話している内に、彼女の容姿と性格のギャップに慣れていき、いつのまにか打ち解けていた。
そうは言っても、まだ出会って一週間しか経っていないのだが…。


「君なら…」
リザがロイの言葉にパッと顔を上げ、ロイを見る。
「君なら…人生の分かれ道とも言える場所で、自分を信じるか、他人を信じるか、どちらを選ぶ?」
ロイがリザを見下ろす。
リザはいきなりの質問に少し驚いた顔を見せたが、片眉をくいっと上げ、ロイを見据えた。
「私なら…」
漆黒の瞳が、琥珀色の瞳を覗きこむ。
「私なら…自分を信じます。」
その瞬間、ロイは目を見開き、漆黒の瞳が揺れた。




「なぜ?」
「なぜなら…自分を信じられなければ、他人を信じることさえも出来ないからです。」
リザは淡々と答える。
「それにもし、自分を信じて間違いを冒してしまったとしても、後悔はないですしやり直すことも可能です。でも他人なら…」
そこでリザは口をつぐむ。
琥珀色の瞳が、分かるでしょ?と言っている。
「そうだな。」
ロイは微笑んだ。
「リザ、ありがとう。自分の進むべき道が分かったような気がするよ。」
「いいえ。年下なのにえらそうなこと言っちゃってすみませんでした。」
リザは恥ずかしそうに苦笑する。
「でもマスタングさんなら、自分で道を見付けることが出来たと思いますよ。」
「そうかな?」
ロイはリザの頭に手を置く。
「例え僕が自分で道を見付けることが出来たとしても、やっぱり君に意見を求めていたと思うよ。」
ロイはリザの頭をよしよしと撫でながら、彼女の耳元でそっと囁く。
するとリザの顔はみるみるうちに赤くなっていき、自分の頭を撫でているロイの手を取る。
「…ッ!もう!馬鹿にしないでください!!」
リザは顔を隠すようにして手を顔にあてると、慌てて台所へ駆けていった。


「やっぱり、まだ少女なんだな…。」
ロイはフッと微笑むと、窓辺に置いてあった研究書を片手に、自分の部屋へと戻っていった。
今日の夜ご飯は何かなあ?なんて考えながら…。


end.
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"coffee break"のmaiさまより。
「若ロイ+仔リザ」で600hitキリリクさせていただきました!
…すみません、かなり無茶を言いました。
こんなむちゃくちゃなこと言ったのに、快く引き受けていただいて、本当に光栄です!!!
ありがとうございました!!

そしてこの御礼メールを書くにあたり、記念すべき1000hitを誤って踏んでしまった私…(汗)
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