懺悔
ブラウスのボタンを一つはずすと、その首筋に大きな傷跡がその姿を覗かせた。 その痛々しい傷跡に、ロイは優しく触れる。 「すまない、こんなにひどい傷をつけてしまうとは…」 もしも自分が親友の敵討ちに巻き込まなければ、もしも彼女が軍人にならなければ、もしも自分が彼女に夢など語らなければ。 いくらそうやって考えたところで過去には戻れないことくらい、わかっている。けれども年頃の女性に、誰よりも大切な女(ひと)に傷をつけてしまったことへの後悔は、まるで絶え間なく押し寄せてくる細波のように途切れることはなかった。 慣れない緊張に目を閉じ、首筋に触れられるくすぐったさに耐えていたリザは、ロイの搾り出すような声にそっと目を開けた。 苦しげな表情のロイの背にそっと腕を回す。 「でも、」 リザは少しいたずらっぽく微笑んだ。 「責任とってくださるんでしょう?」 その言葉にロイは瞠目し、しばらく呆けていた。やがて、停止していた思考が再び動き出したのかその触れていた手で頭をガシガシと掻くと、首筋にもう一度手を添えて、今度は傷跡に触れるように口付ける。 「責任とるよ」 首筋、肩、脇腹、腕…ボタンを外しブラウスの前身ごろをはだけながら、次々と現れるありとあらゆる戦の勲章にキスを落としていく。 「ここも、ここも、ここも」 ブラウスの袖から片腕を抜き、そこに現れた自分が施した背の火傷に口付けると、そこに浮かぶ錬成陣を辿るように手で触れる。 「全部、責任とるから」 そしてその錬成陣にちゅっと音を立てて最後の口付けを落とすと、白いシーツに沈むリザをぎゅうと抱きしめて言った。 「覚悟しておけよ」 「何を今更」 (2009.11.27,2010.2.14再up) -- ガンガン2009年12月号ネタバレ合同突発企画『Secret Love』掲載分(企画は終了しました) |