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<ロイアイ>
■青い春のお題 (お題:COUNT TEN 様)
■その他


<ロイアイ>

■青い春のお題
【初恋】学校にも男子生徒はたくさんいるけれど、そんなのとは比べ物にならないくらい彼は洗練されて見えた。やはり街の人は違うのだと思うと、近寄りがたかった。それでも生真面目な彼が時折向けてくれる笑顔が嬉しくて、気づくと私は彼の姿を目で追っていた。

【背伸び】5つ程下の師匠の愛娘は、亡くなった母親の代わりに学業に家事にと忙しい。本当は子供らしく愛らしい表情をするのに、忙しさと父の弟子に対する構えでいつも気難しい顔をしている。懸命に背伸びしている様子がかわいくてつい小難しいことを言ってしまうのは、俺の悪い癖か。

【海】「『海』って知ってますか?」陸の中央の国に住む我々は、海を知らない。「とっても広くて、綺麗なんですって」学校で得た知識でしか知らない海を想像して、少女は目を輝かせる。「いつか見てみたいな」憧れを寄せる彼女のかわいらしい姿に、いつか連れていってやりたいと胸踊らせた。

【夕焼け】父親と言い争い涙を流す彼女を町まで連れ出した帰り道、綺麗な夕焼けに包まれた。「明日はきっと晴れますね」目の周りを赤く腫らしながら、それでも最高の笑顔で彼女が告げる。願わくは『彼女の心も明日は晴れますように』。買い出しの重い紙袋を持ち直し、「晴れるといいな」と呟いた。

【ケンカ】持ちきれないほど荷物を抱えて少女が一人町から帰ってきた。「買い出しに行くなら声を掛けて」と言ったら、「子供扱いしないでください!」と彼女は怒り出した。少しでも負担をかけないようにと申し出たのに、厚意を無下にされたようで腹が立つ。くそう、頼まれたって手伝ってやるもんか!

【ひとりぼっち】昨日些細なことで喧嘩をしたからなんて理由ではないとは思うけれど、いつもなら昼過ぎには顔を出す彼が、今日は一向に来る気配もない。父は相変わらず部屋に篭りきり、私は一人キッチンでお茶の準備をしながら待ちぼうけ。慣れているはずの一人ぼっちが、無性に哀しく感じられた。

【涙】いつもより遅くなり慌てて師匠の家へ向かうが、ノッカーを鳴らしても返答がない。仕方なく裏口から勝手に上がれば、キッチンにいつも出迎えてくれる少女の突っ伏す姿。目尻に滲む涙、一人寂しく待っていたのかと思うと可愛らしく、昨日の喧嘩の事などすっかり彼方に消え去っていた。

【二人乗り】師匠から急ぎの用を頼まれて、隣家から自転車をお借りした。一人で行く準備していたが、背後に感じる少女の興味津々な熱い視線には敵わない。仕方ない、彼女を乗せて行こうか。町の郵便局まで、夕方の二人乗りデート。

【トモダチ】確かに彼女との関係は『師匠の娘と弟子』なのだが、彼女が友人に説明する「お父さんのお弟子さん」という関係には、どうにも距離感を覚える。『友達』への昇格は彼女の性格からしておそらく難しいだろうが、せめてもう少し近づけないものかと、関係を表す言葉を模索する。

【また明日。】学校が夏期休暇に入り、父のお弟子さんも今日から泊り込みでの修行。普段は放課後に顔を出していたのが、明日からは朝から晩まで我が家にいることに少々興奮を覚え、寝る前に意味もなく彼の部屋まで挨拶に行く。「おやすみ、また明日」いつもと違う意味合いの『明日』に、今夜は眠れるかしら。

(2010.12.26〜2011.8.30)



■その他

*寒い晴天の日、所要で街に出た。前から吹き付ける冷たい風にコートの襟を立て、首元を手で押さえながら上司の後ろについて歩いていると、急に上司の歩みが遅くなる。三歩の間隔が一歩になり、吹き抜ける風が少し和らぐ。何気なく与えられる触れることのない温もりに、心の底から温かくなった。

*列車が到着したばかりのごった返す駅の改札で、降りてくるはずの上司を探す。特に背が高いわけでもなく人混みの中に入れば紛れてしまう人なのに、迷うことなく見つけられるのは、もはや狗の本能。

*ファイリング講義を受講して上官の執務室に戻ると、応接セットに構築式やら錬成陣やら書かれたメモが所狭しと広げられていた。一見すると酷い散らかりようだが、熟考中の彼の中ではおそらく全てのメモの所在がわかっているに違いない。錬金術師独特の頭の構造に、手出し無用かと溜息を吐いた。(RR)

*「君を失う訳にはいかない」部下としても、幼馴染としても、愛する女性としても。君に惹かれ、君を守り、君を幸せにするために目指した結果、君の信頼も君自身をも失うことになるとするならば、私はどんな顔をして君と相対していられようか。

*真新しい制服に身を包む。先日までこの手で行ってきた残虐な行為への自責の念は、気持ちを新たにしたとしても決して拭えるものではないが、再び上を目指して歩み出した男の背を守るため、そしてその意を誤った方向に向かわせぬために、改めてその背についていく。

*雨の夜の残業。ふと外が静かなのに気づいて窓から様子をうかがってみれば、外は真っ白の世界、いつの間に雪に変わったのやら。「どうりで寒いわけだ」窓のそばのしんと冷えた空気に、背後から窓をのぞく上官の衣越しの体温がほんのりと暖かく感じられた。

*「これだけ積もると、帰りたくなくなるな」雪を見ながら上司が苦笑する。こんな寒い日は、恋人同士ならきっとそばに寄り添って暖をとるのだろうけれど、生憎私たちはそんな関係ではない。残業終わりに、甘い言葉の代わりに温かいココアを提供して、ほんの少しだけ温もりと甘さを分け与えるのみ。

*『産まれたぞ!女の子だ!!』外線から職場にまで私用電話を掛けてくる親友に呆れながら、一方で胸を撫で下ろす。赤ん坊なんて全く想像もつかない自分が、親友の愛子の誕生をまるで我がことのように喜べるのは、それが自身には縁のないものだと考えているからかもしれない。

*「いいから抱いてみな」付き添いで訪ねた先で、半ば無理やり生まれて半月も経たない赤ん坊を手渡される。この手に感じるのは柔らかさと温かさと、今にも壊れてしまいそうに儚さと。「うん、いい顔してるな」たった3kgの重みに、自身の何処にあったのだろう母性が溢れ出す。

*緊迫した状況の中で、がれきの中、二人、話すこともなくただ静かに座って無線からの情報を待つ。一人だけだと不安にならないと断言することはできないけれども、二人なら心落ち着いていられるから不思議。


(2010.12.26〜2011.3.16)



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