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<ロイアイ>
■その他
<ロイアイ>
■その他
*会議に行く途中の渡り廊下にて、中庭の木々に綺麗な花が咲き誇っているのを見つけて立ち止まる。たった数十秒のなんてことのない出来事、けれどもいつもは前を歩く彼と珍しく並んで会話する時間は、私にとっては宝物。
*「娘のためなら120分待ちなんて何てことない!」遊園地のみやげ話をしながら豪快に笑う己の親友に、呆れ顔の上司。「でも、例えば博物館の入館、研究のためなら120分でも待つのでしょう?」と問えば「当然!」と胸を張る。五十歩百歩、男のこだわりにはついていけない。
*護衛も付けずに自転車で出かけると言って聞かない上司。仕方なく見送れば、自転車が走り出した途端、愛犬が追いかけ始めた。リードを引いて「ついていかないのよ!」と声をかけても、楽しそうな愛犬は止まる気配もない。苦笑してスピードを落とす上司、護衛は結局逃れられない様子。
*コーヒーのお替りを給湯室で勝手に入れて戻ってくると、親友が自身の執務室の前で女性事務官につかまっていた。仕事なのだろうが、頬を染めぼぅっと見つめる様子はとてもそうは見えない。なるほど噂はこういうことか。黙って執務室に入ると、親友をからかってやろうとほくそ笑んだ。
*「かわいい子じゃねえか」戻ってきた親友に声をかける。「そうか?」「好みじゃねえの?」「興味ない」鬱陶しそうな親友に「ふーん」と言えば怪訝な顔。「なんだ?」「彼女以外は興味ないか」「どうでもいいだろ、早く帰れ!」ポーカーフェイスはどこへやら、真っ赤な顔で本音丸出しの親友に爆笑した。
*「俺は英雄!」「私は魔法使い!」街角で子供達がなりたいものを主張し合っている。「私は昔花嫁さんになりたかったんです」と告白すれば、「私はさしずめ、野望を果たすために研究を放棄して英雄にならざるを得なかった魔法使いってとこか」と苦笑い。貴方は私にとって,永遠の魔法使いです。
*バーで一人グラスを傾けていそうなどと言われるが、そんなことは皆無に等しい。他所で格好つけて己に酔いしれるくらいなら、自宅で適当な酒を煽るか、酒よりも研究書に囲まれている方がよほど気楽だ。見た目だけで本質を見ない連中に興味はない。言わずとも内面まで察してくれる女性がいい。
*『また情報が入ったら連絡する』中央の親友が逐一入れてくれる情報は、己の出世には欠かせないもの。根回しなどあまり気持ちの良いものではないが、軍という特殊な団体の中で効率よく登るためには必要不可欠。目的のためにどんな方法も厭わない、そう思わなければこの中では到底生きていけない
*青く高い空。頬に当たる風。急な上り坂。ペダルを漕ぐ足。上がる呼吸。控え目に腰に回る細腕。登り切った達成感。広がる眼下の景色。息を呑む音。風にそよぐ短いブロンド。きらきらと輝く瞳。蹴りだす地面。「きゃっ」という小さな悲鳴。少し力のこもる腕。背中に感じる重み、君の信頼。
*引越準備の最中に見つけた、アクセサリーケース。中は20の誕生日に「お祝いだから」と彼から渡され断り切れずに受け取った少々フォーマルなネックレス。着けて行く場所がないと滅多に出さないそれを、取り出して着けてみる。心なしかときめきを覚え、思わず顔がほころぶ。幸せのひととき。
*暑い、暑いと男が言う。確かに厚地の軍服は暑いが、それにしてもダラケ過ぎだ。扇風機だけの職場にはほかに涼を取る手段もなく、仕方なくお気に入りのペパーミント精油で即席のルームスプレーを作った。単純な男は「涼しい!」と大喜び。お気に入りの精油だったけど、これで仕事がはかどるのなら。
*「いつか…」そんな曖昧な未来ほど信じられないものはないとわかっていながら、続くはずのない彼の言葉の続きを期待する。自らの幸せなど決して望んではいないけれど、夢を見るくらいは許されますか?
*無駄なものはあまり買わない質だけど、閉店前のマーケットのタイムセールには心揺れる。来るとも知れない夜中の訪問者を想いながら、夜食になりそうなものをついバスケットに入れる。どうせ余って、朝食にまわるのに。
*何のきっかけか勤務中に観たい映画の話になり、退勤後に連れだって映画館へ。終了間近の映画は他に人がおらず、後方の座席に二人並んで座った。上映中ふと脇を見れば涙を浮かべる彼女、こちらの視線に気づいて恥ずかしそうにする。無防備な姿をさらけだしてくれたことに、覚えるのは満足と優越感。
*「ちょっとあなたたち、もう少し職場を片付けなさい」「へーい」「ほら、引き出しの中もぐちゃぐちゃじゃないの!」「だって、捨てられないんッスよ」「片付けは決断よ」「…あそこにも決断できない人がいますけどね」「上司に忠告する前に、部下が示しをつけなきゃ!」「なんか逆な気が…」
*提出した矢先に追加される書類の山に、うんざりとする。決してサボっているわけではないのにこの仕打ち、果たしてこの山が無くなるのはいつ頃のことか。残業確定という事実と、それに彼女を付き合わせなければならない申し訳なさに、盛大な溜息が出るのは仕方ない。
*常より多くの部下を従え、戦場では若いながらも一個旅団を任されるような大の男が、食事のためにテーブルを拭きカトラリーを並べ『どうだ』と言わんばかりの自慢げな顔をするのが、まるで子供のお手伝いのようで情けないやらかわいいやら、思わずと頭をぐりぐりと撫でたくなったのは秘密の話。
*異動に伴う引越し準備。極力荷物を減らすため、不要なものは処分する。持っていくのは必要最低限の生活必需品と、ほんの少しの想い出のみ。彼と一緒なら、それで充分。
*上司と、部下を労う宴会の買い出し。職務中は部下の私が荷物を持つのが当然だが、ここでは荷物を取り上げられる。「これは職務の一環です」と抗議すれば、「女性の荷物を持たぬような男だと見られたくないものでね」と軽くあしらわれ。慣れぬポジションに己の性を憎むべきか、喜ぶべきか。
*ふと見上げた先に、彼が傍の人に優しい笑顔で話しかけるのを見つけて、小さな嫉妬心が芽生える。傍にいる時間が一番長いのは、彼の優しい笑顔を一番知っているのは自分なのに、と。決してそんな資格などないのに。
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(2011.4.21〜2011.8.18)
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