Schwanger Frau--妊婦--

 ふと夜中に目が覚めた。外はまだ真っ暗。雨の降る音に交じって、時折稲妻が落ちる音が聞こえる。

 何気なく手をやると、そこには明らかに膨らんだお腹があった。当てた手に向かって、蹴る感触。

 私の、赤ちゃん。

 夢ではない、違いようのない現実。
 軍人として、護るべき人の副官として、一生を終えるのだろうとずっと思ってきた。普通の女性のように愛する人と結婚して、子供を産んで、家庭を築いて、なんて生活を送ることがあるとは、思ってもいなかった。…もちろん、まったく夢に見なかったわけではないけれど。
 想定外の、という意味ではものすごく不安なのだ。私に子供なんて産めるの?育てられるの?幸せにしてあげられるの?……



「眠れないのか?」
 思わず握り締めた毛布の感触に気付いたのか、隣に夫が目を覚ました。
 しまった、起こしてしまった。もう昼間にうたた寝していても、護ってあげることができないのに。

「不安?」
 表情にでていたのだろうか。夫が包むように握ってくれた手が、あたたかい。一気に安心感に包まれる。

 一人じゃないのだ。夫がいる。そして赤ちゃんも。三人で乗り切ればいいのだ。

「もう、大丈夫です」


 いつのまにか雨があがり、窓から少し明るい夜明けの空がのぞいていた。




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理想の夫像(笑)
こんな旦那さまがいたらいいのにな。
すいません、こんなネタで。今じゃないとうまく書けなそうだったので…


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