モテる男の行動習慣

【4】 がんがんボケて、笑いを取る

 イーストシティの市街地の女性に東方司令部所属のロイ・マスタング大佐について聞けば、大抵の人はこんな風に答えるだろう。
「マスタングさんって、軍人さんなのにガサツな感じがなくてスマートだし、いつも笑顔で手を振ってくれたり声かけてくれたり、意外に気さくでとても素敵だと思うんだけど、なんか完璧すぎてこちらも話しかけるときドキドキしちゃうのよね」

 だが、東方司令部内で女性職員に同じような質問をすると、おそらく違った答えが返ってくる。
「マスタング大佐はかっこいいし、出世頭だし、国家錬金術師で頭もいいし、それでいて私たちにも気さくに話しかけてくれるから憧れるけど、ときどきとんでもないことをしだすのよね」
 例えば、下士官と一緒になっていたずらを仕掛けていたり。
 天気が良い日に執務室からの逃亡を図って、その捜索に司令部中を巻き込んだり。
 そうやっているうちに、やるべき書類をぎりぎりまで溜めこんで、遅くまで残業になったり。
 逆にデートの予定があれば、定時までに終わらせるべき書類をすべて提出したり。
 上官のくせに、副官に怒られて平謝りしていたり。
 例をあげればきりがないほど、彼の「とんでもない」逸話は出てくる。しかもどれも、おおよそ若くして出世した切れ者の佐官とは思えないような話なのだ。

 そんなものだから、東方司令部の人間でマスタングをスマートだと思っている人は、よほど配属されたばかりの者でもない限り、いない。そんなことは日常茶飯事、周りはそれを「またやってるよ」と笑って遠巻きに見物したり、あるいはできるだけ関わらないようにその場から立ち去ったりするのが、東方司令部の常識なのだ。
 それらの行動はマスタングがわざとやっているのか、それとも本性なのかはわからない。だが、少なくとも街で思われているような、いわゆる完璧タイプの人間ではないことは確かだろう。

 だから、彼女たちはマスタングをこう評するのである。
「一度スイッチが入れば誰よりも凛々しい軍人なのに、普段はどこか子供みたいで、かわいいのよね」

(2012.2.22)



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